谷川浩司:光速の寄せ Vol.1 振り飛車破りの巻

美濃囲い、高美濃、銀冠、穴熊崩しを解説
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評価:B
対象者:10級〜三段
発売日:1995年6月

光速流の寄せで知られる谷川浩司棋王が、各戦形別に寄せのエッセンスを解説する『光速の寄せ』シリーズ(全5巻)。

ライバル羽生王位の『羽生の頭脳』シリーズの背表紙がブラック、本シリーズの背表紙はワインレッド。本棚に両シリーズを揃えて並べてみると、上杉謙信とそのライバル武田信玄をテーマにした映画『天と地と』を思い出します。川中島で対峙する黒の甲冑に身を包んだ上杉軍と赤の甲冑の武田軍。赤と黒の対比を狙って本シリーズの表紙をデザインしたとケインは深読み(つーか妄想)します。

第一巻の本書では、美濃囲い、その発展形となる高美濃、銀冠、そして穴熊と振り飛車の代表的な囲いをいかに崩していくかを、基本手筋、詰め将棋、谷川棋王の実戦で学んでいきます。

222ページ、右ページに問題図が2枚、次項右側にその解答図が2枚の全四章構成となっています。

第1章 基礎知識編
第2章 光速の手筋編
第3章 光速の即詰み編
第4章 振り飛車破りの巻・実戦編

美濃囲い崩しに関する手筋本なら、必ず紹介されている基本中の基本手筋です。▲6二香△7一金(△同金は▲7一角でアウト)に▲5三角と筋悪そうに角を打つのが必殺の狙いを秘めた一着となります。次に▲7一飛成△同玉に▲6一香車成(開き王手)が強烈で、△同玉は▲6二金の1手詰め、△8二玉も▲7一角成△9二玉▲8二金で詰みます。

この形で注意しなければならないのは、後手の持ち駒に金があるときは▲5三角に対して△5二金と打たれ、▲7一飛成△同玉▲6一香成は△同玉と取られ、▲6二金が打てません(△同金がある)。これはうっかりしやすいところなので、本書ではこの局面図をひっくりかえして、振り飛車側の立場での問題も出題されています。

この本に載っていて、他の本には載っていない寄せのパターンはなく、有段者を対象とした光速の即詰み編の章をを除けば、必ずしも読まなければならない本ではありません。

このシリーズ全体について言えることですが、第1章での囲いの紹介がやや冗長で、この部分をカットしてもう少し練習問題を増やしてほしかった感じがします。

また、穴熊崩しの問題では、基本ともいえる▲9四歩△同歩▲9三歩△同香▲8五桂などの端攻め問題が1問しかなく(しかも▲9五歩△同歩▲同銀の棒銀)、ボリューム不足が否めません。

シリーズ次巻となる「光速の寄せ Vol.2 振り飛車で勝て!」では、居飛車の代表的な囲いである舟囲い、左美濃、居飛車穴熊などの崩し方を見ていきます。