すぐに使える将棋の手筋 上巻

テーマとなっているのは歩・香・桂・銀です
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評価:D
対象者:5級〜三段
発売日:2005年6月

プロの公式戦やアマチュア有段者の将棋で実際に現れた手筋を駒別にカテゴライズして2冊にまとめたものです。

上巻となる本書のテーマとなっているのは「歩・香・桂・銀」です。全部で49のテーマがあり、1つのテーマにつき4ページが用意されています。

全214ページの4章構成で、見開きに盤面図が4枚配置されています。

第1章 歩の手筋
寄せに役立つ歩、逃げ道遮断の歩、拠点解消の歩…ほか
第2章 香の手筋
大駒の筋を外す香、香には香の反撃、香の垂らし…ほか
第3章 桂の手筋
舟囲い崩しの桂馬、振り飛車の端桂、天使の跳躍…ほか
第4章 銀の手筋
棒銀は将棋の基本、桂先の銀は定跡なり、俗手の銀…ほか

軽手一発で後手の陣形を弱体化させましょう

第1章 歩の手筋 逃げ道遮断の歩より:図は△7五歩まで
矢倉VS雁木の中盤戦です。▲4五桂あるいは▲4五銀とする前に雁木陣を弱体化させましょう。ここでは、▲2二歩が好手で、△同金と取らせることにより4一玉の退路を封鎖します。また、4筋に金が利かなくなるという意味合いもあります。

▲2二歩△同金以下、1.▲4四歩△同銀▲4五銀とぶつけて、銀を手持ちにすれば▲7二銀の狙い、また2.▲4五桂△4四歩▲6五銀△同銀▲5三桂打の狙いがあります。どちらの場合も▲2二歩が利いています。

実戦からの取材ですので、居飛車・振り飛車を問わず、いかにもよく現れそうな形がテーマ図となっています。そのテーマ図からの実際の進行だけでなく、他の狙い筋用にも盤面図が別に用意されている点が親切です。

また1つのテーマに2つの例題が掲載されていますので、一つの形だけではなく違うバリエーションや応用も一緒に勉強できます。

しかし、本シリーズには致命的な欠点があります。それは盤面図の配置の仕方です。「A図」の近くに手順が掲載されておらず、次のページに載っていることがざらにあります。しかもその手順の真横には「C図」があったりします(笑)。

勿論、その「C図」以下の指し手を見るためには次のページをめくらなくてはならないのですが、次の「D図」はさきほどの「C図」と同じページにあるために、今度は再びページを戻さなくてはなりません。

この辺のややこしさは、「M1グランプリ2007」で優勝したサンドウィッチマンの持ちネタ「街頭アンケート」の中で登場する血液型の4択並です…って、知らない人には何のことかサッパリわからないですね。

採り上げている手筋や盤面図以下の解説は良いのですが、この構成が足を引っ張っていますので、何回も読んで復習しようという気がまず起きません。

次巻の「すぐに使える将棋の手筋 下巻」では「銀・金・角・飛車・玉」の手筋を見ていきますが、この構成難は全く同じですので、セットで買おうと思っている方は本屋さんで実物をご覧になってから決断した方がいいと思います。

なお駒別に手筋を解説した棋書はいくつかありますが、実戦形をもとにしたものは数が少なくなります。桐谷六段の「歩の玉手箱 楽しく読める手筋の宝庫」や田丸八段の「小駒の必勝テクニック」がなかなかの良書ですので、初〜中級者の方はそちらも参考にしてみてください。