森けい二:次の一手「詰めと必死」

実戦形式のため難易度はやや高め
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評価:B
対象者:5級〜三段
発売日:1989年10月

「次の一手」形式で出題される実戦型の「詰め将棋」と「必死(必至)」の問題集です。本書の大きな特徴は「その問題が詰め将棋なのか必死なのか、実際に考えてみないとわからない」という点です。

彼我の玉形と持ち駒、問題図の下にあるヒントで即詰みと必死のどちらが求められているのかはある程度はわかりますが、自玉への詰めろが非常に複雑なものが数題あり、それなりの手数を読む能力が求められます。

問題数は全部で100問。1ページにつき一問の出題形式となっており、次のページで正解図に加えて、必死(あるいは詰み)手順の途中で登場する妙手をクローズアップした参考図を交えて解説が行われます。

美濃囲い攻略はやはりこの筋から

第6問より:問題図は△5九飛まで
後手玉は金銀三枚で安全そうに見えますが、美濃攻略の手筋を勉強した方ならひと目で思いつく手があるはずです。正解は▲7四桂△9二玉▲7一角成△同金▲8二金△同金▲7一銀までの七手必至です。

初手の▲7四桂はどなたでもわかったと思いますが、その時点で五手目の▲8二金で受けの空間を埋めておいてから、▲7一銀とかける一連の手が見えたかどうかが重要です。「読むだけで強くなる終盤のコツ130」や「美濃崩し180」のページの最初の問題図と同じ狙い筋ですので、同書を持っているにも関わらず間違った方は復習が必要?

双玉接近は手番が全て

第69問より:問題図は△1五玉まで
△3七銀成りの両王手からの詰みを見せられて相手玉の寄せどころではないように見えるこの局面。しかし、ここでは▲1六銀△同玉▲2七銀△1五玉に強く▲1七玉とすれば、絵に描いたような「詰めろ逃れの必至」が決まり先手勝ちとなります。

相手玉を上部に引きずり出して、自玉をグイッと上がって詰めろを消しながら必至を掛ける筋は「谷川流寄せの法則 応用編」のページの問題図のように、居飛車の船囲い急戦 vs 振り飛車をはじめ幅広い局面で応用が利きます。

実戦型の必死問題は勝浦九段の著書「必至のかけ方 寄せのコツを体得する」の応用問題と同じ形式ですが、難易度は本書のほうが高いです。部分図で必死の基本手筋を学んだ中級者〜有段者が腕試しに読むのにいいでしょう。

実戦形の強みは自玉の危険度と相手玉への寄せとの兼ね合いを読む能力が養われること。こういう本を読んでおくのも上達の近道ではないでしょうか?

なお、著者の森九段は必死の入門書とも言える「寄せが見える本 基礎編」も著しています。ビギナーの方はまずはそちらで基礎を固めることをオススメします。