金子タカシ:ザ必死! (新 終盤の定跡 Vol.1)
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評価：S
対象者：10級～四段
発売日：1994年12月
初級者から高段者までを対象とした必死（必至）専門書として、現在も最高の評価を受けている「寄せの手筋168」。絶版後は将棋ファンだけでなく、オークションマニアの方にも注目されているようで、お手ごろ価格での入手はまず不可能になってしまいました（笑）
本書はそんな「寄せの手筋168」の著者である金子タカシさんが手掛けた必死専門書の第2弾です。2003年にMYCOMの将棋文庫として「ザ・必死 これが終盤の定跡だ」の名前でも再刊行されましたが、どちらも絶版となっています。
全222ページの3章構成で、全100問を出題。1ページあたりの問題数は1問となっており、問題図の下に「金を斜めに誘えといえば…」「大駒の協力」などの簡潔なヒントが記されています。解答ページには正解図のほかに、参考図（途中図or失敗図）も掲載されています。目次は以下の通りです。
- まえがき
- 序章 必死のパターン分類
- 第1章 1手･3手の必死（第1～40問）
- 第2章 5手･7手の必死（第41～87問）
- 第3章 9手以上の必死（第88～100問）
第1章 1手･3手の必死 第9問より
▲8二金からの開き王手狙いの筋は8四の地点が空いているため上部脱出されてしまいます。かといって▲8四桂では△同歩と取られて、今度は8三～7四のルートで逃げられてしまいます。そこから逆算していくと正解は･･･
ここでの正解手は▲7四桂で、この一手で必死となります。対して△7四同歩（馬）ならば、今度こそ▲8四桂が打て、以下△同歩▲8二金△9三玉▲7二金（開き王手）△8三玉▲8二角成で詰みです。
第1章 1手･3手の必死 第36問より
要の金を攻める▲3二歩△同金▲4一銀で3手必死となります。▲4一銀に対しては①△2三金は▲3二金の一手詰めですし、②△4一同玉は▲2一龍△3一合駒▲5二金で詰み。
最も後手が頑張る手順は▲4一銀に対して③△2二飛ですが、▲3二銀成△同飛▲4一金△同玉▲2一龍△3一合駒▲5一金△4二玉▲5二金で詰みとなります。
第2章 5手･7手の必死 第55問より
相矢倉の終盤をイメージした局面でしょうか。一見手掛かりがなさそうですが、ここは▲1三銀として以下、△同桂▲1一角△1二玉▲3三角成で5手必死となります。
初手の▲1三銀に対しては△同玉がありますが、それには▲2一飛成として▲1二金を狙います。対して単純に1二の地点を埋めるだけでは▲2四角△同歩▲同龍で詰みですので、1二の合駒は△1二桂しかありませんが、以下▲1一金として桂馬を外す筋を見せれば受けなしです。
第2章 5手･7手の必死 第79問より
必死問題で頻出の手筋が2回出てくる良問で、本書で一番のお気に入りです。
▲8三角△8二玉▲9二角成△同香▲8三銀△9三玉▲7四銀成の7手必死です。3手目はよくある必死問題では▲6一角成ですが本問では△8四飛があります。一旦打った▲8三角と▲8三銀が邪魔駒となるため、その処理がポイントでした。
必死ビギナーのために冒頭で「必死」と「詰めろ」の違い、また必死パターンを「A.数的優位」「B.二つ以上の詰めろ」「C.受ける場所なし」「D.両王手」「E.切り返し」の5つに分類して、それぞれの実例を盤面図と共に詳しく解説している点が素晴らしい。
9手以上の問題となると、最初から解く気が起きない人もいらっしゃるかもしれませんが、駒の配置・持ち駒は非常にコンパクトですし、最終図は「寄せの手筋168」や本書の1･3･5手の必死問題と類似しているので、「あ、ひょっとして前に解いたあの形を目指せば必死がかかるのでは？」と応用を利かすことができます。
前書を読んだ方もそうでない方も、文句なしでオススメです。強いて難点を挙げるなら、各問題の上部に必死パターンの分類を文字ではなく5つのイラストで表示しているのですが、イラストが下手くそ（失礼）なため、何が何を意味しているのかわかりにくい点です（復刻文庫版ではカット）。
なお、著者の金子タカシさんは本書の2年後に、全題新作となる必死専門書の三作目「詰みより必死 終盤の超発想法」も出しています。そちらもパーフェクトな出来になっていますので、参考にしてみてください。