終盤の定跡 実践編

有段者向けの一冊
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評価:C
対象者:初段〜三段
発売日:2003年4月

本書は必至・詰め将棋・受けの基本パターンをコンパクトにまとめた良書「終盤の定跡 基本編」で学んだ内容を実戦に応用するための「次の一手」問題集です。

問題は専門タブロイド紙「週刊将棋」の段級位認定コースで出題されたもののなかから、二段〜四段クラスを計104問セレクトしたもので、それぞれ「攻め」・「受け」・「攻防」の3つにジャンル分けされて出題されています。

全215ページの3章構成となっており、問題図の下には簡単なヒントと「週刊将棋」連載時における読者の正解率が掲載されています。目次は以下の通りです。

  1. 二段クラス(第1〜35問)
  2. 三段クラス(第36〜70問)
  3. 四段クラス(第71〜104問)
急所の駒を龍で外す

二段クラス 第24問より:図は△9七角成まで
後手玉に詰みは無いうえ、先手玉は部分的に見ると必至でピンチのようですが、9七の馬を抜く筋を考えると…

正解は▲7一角です。対して△同金や△8一玉はそれぞれ一手詰めですので、△同玉の一手となりますが、以下▲9一飛成△8一香▲8二金△6二玉▲9七龍△同金▲4四角△5一玉▲9七香と馬と金を外して先手勝ちとなります。

盤面を広く見て絶妙の受けを見つける

三段クラス 第55問より:図は△9八龍まで
▲4一龍は△4八龍▲3八金△同龍以下の詰みがあります。持ち駒の角で王手が掛かる&後手の龍の位置に注目すると、一手を稼ぐ絶妙の受けが…

正解は▲8八角です。以下△同龍に▲9九角が狙いの一手となります。△9九同龍の局面は先手玉の詰めろが消滅していますので、今度は▲4一龍として先手勝ちとなります。

問題の難易度は実際の応募者の正解率を見る限り、10%台から90%台と非常に幅広く、同じ四段の問題でもすぐにわかる簡単なものから、長手数の変化手順を読みきることが要求される難問まで実に様々です。

このタイプの本をレビューする際によく書いていることなのですが、「必至」や「詰めろ逃れの詰めろ」を実現するために大駒を派手に捨てる筋が多く登場しており、実戦ではより頻出度が高そうな地味な手は非常に少ないです。

僕は趣味で「創作次の一手」の問題を作成したり、昔の「将棋世界」に何度も応募したりしているのでわかるのですが、確かに狙い筋が明快で派手なものほど問題の作成は簡単です。ですので、そういった趣の問題が多いのはある程度仕方ないのですが、実用性としてはどうなのでしょうか?

冒頭で紹介した「終盤の定跡 基本編」は紛れも無い良書ですが、それ以降のシリーズは全て「次の一手」形式の問題集ですので、シリーズをまとめて購入しようと考えている方は注意したほうがよいと思います。

なお、本書の続編は二段〜四段クラスの問題の中から特に正解率の低かった難問だけを集めた「終盤の定跡 必勝編」となっていますが、そちらの方は文庫版として復刊されていませんので現在では入手は困難です。