飯塚祐紀:分かる・役立つ速効!矢倉の手筋

スズメ刺しや右四間飛車などの狙いも解説
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評価:B
対象者:10級〜初段
発売日:2002年4月

相矢倉での戦いに定評があり、河口六段の「対局日誌」でも「30代半ばになってから着実に力を付けてきた、いまどき珍しい骨太な棋士」と評価された飯塚六段による矢倉の必修手筋の解説書です。

タブロイド専門紙「週間将棋」に連載されていた同タイトルの講座を加筆して単行本化したもので、矢倉初心者〜中級者を対象とした基本的な手筋を1つのテーマにつき6〜8ページにわたって見ていきます。

全221ページで基本編と応用編の2章構成となっており、見開きに盤面図が4枚配置されています。

十字飛車の筋は常に警戒が必要です

第1章 飛車を大きく使う十字飛車より
▲2四歩から飛車先の歩を切るのも有効手ですが、ここではさらに効果的な手があります。正解は▲3五歩△同歩▲2四歩△同歩▲7一角△7二飛▲4四角成△同金▲2四飛(王手金取り)です。△3五同歩に代わり、△同銀は、以下▲同銀△同歩▲2四歩△同歩▲4四歩と進み(△同金はやはり▲2四飛の筋がある)、拠点が出来てやはり先手良しです。

相矢倉ではこの筋は常に注意が必要で、後手の形が△3五歩−4四銀になった場合は▲7一角の狙いが常に生じます。

やはり同じ狙い筋があります

こちらは上図の例に引き続いて紹介されている例題です。手順は若干長くなりますが、基本的には同じ狙いとなります。▲1二歩△同香▲1三歩△同香▲3五銀△同銀▲1三桂成△同桂▲3五飛△3四歩▲1五飛で一丁上がりです。

△3五同銀とおびき出すことによって、▲1三桂成と効果的に端を弱体化させるのがポイントです。▲1五飛の局面では後手の金銀が役に立っておらず、端を支えることが出来ません。

本書はこのように、1つのテーマを基本例題と応用例題で見ていきますので効率的です。また、攻めだけではなくて受けの手筋も紹介されていますので、バランスよく矢倉の基礎を身につけることが出来るでしょう。

ただし、後半の第2章は部分的な手筋ではなく、スズメ刺しや矢倉中飛車、アマチュアに人気の右四間飛車における狙い筋の解説となっています。

この狙い筋の中で第1章で学んだ手筋が登場するので、実戦スタイルで学ぼうということなのでしょうが、ここでは(100ページあります)総復習的な問題を出してほしかったところです。

解説が非常に丁寧な分、テーマ数が少なくなってしまったところが少し残念です。その辺りは計200問の問題で矢倉必修手筋を総ざらいした「手筋の達人 矢倉の手筋が満載」などで、補ってやる必要があるでしょう。