終盤の定跡 必勝編

難問がズラリ
この本の詳細をAmazonで見る

評価:C
対象者:二段〜四段
発売日:1991年7月

「週刊将棋」の段級位認定コースで出題された二段〜四段クラスの問題から、特に正解率の低かった難問をセレクトした終盤特化型の「次の一手」問題集です。

シリーズ的には「終盤の定跡 実践編」の続編という位置付けですが、本書は文庫版として復刊されませんでしたので、年代的にはこちらが10年近く古くなっており、古本屋でも見かけることはまず無いと思います。

全208ページで問題図の下には簡単なヒントと「週刊将棋」連載時における読者の正解率が掲載されている点は前巻と同じですが、本書ではプロの実戦で登場した華麗な即詰み問題が18題ほど別章で用意されています。目次は以下の通りです。

  1. 二段クラス(第1〜18問)
  2. 三段クラス(第19〜43問)
  3. 四段クラス(第44〜82問)
  4. プロの実戦編(全18問)
玉の早逃げ八手の得

三段クラス 第41問より:図は△5七角成まで
正解率15%の問題です。▲9二金△同玉▲9三歩成△同馬▲同香成で馬を外す手順は、後手玉は全く寄らなくなってしまいます。「速度計算」がヒントです。

正解は▲1八玉の早逃げです。対して@△3九馬(詰めろ)には▲9三角が「詰めろ逃れの詰めろ」で先手勝勢、A△3七金には▲同桂△3九馬▲2八金、B△8一桂は▲9三角で先手勝勢となります。

1987年A級順位戦より

プロの実戦編 第4問より ▲米長邦雄 △加藤一二三:図は△7六銀まで
即詰みの問題です。正解は▲1四桂△同歩▲1三銀△同香▲3三銀△同金寄▲1三角成(投了)△同玉▲1四歩△2四玉▲1五金です。

五手目の▲3三銀は@△同角でも△同金直でもやはり▲1三角成、A△同玉は▲2五桂、B△同桂は▲2一飛があって詰みとなります。また、最後の△2四玉で△2二玉でも、▲1三金から詰みです。

どのクラスの問題も正解率「40%台」「30%台」「20%台」「10%台」の4タイプにカテゴライズされており、ページが進むにつれて難易度は高くなっていきます。

実戦形式の駒の配置ですので、パッと見た感じでは難易度は前巻と同じように思えるのですが、正解手に対する相手の応手以降の変化が複雑なのが正解率を低くしている原因なのでしょう。

プロの実戦編では、谷川−大山戦で登場した「角不成」で打ち歩詰めを回避した有名な局面をはじめ、プロの終盤力を改めて堪能できる内容になっています。
高段者の方でも「これは無理だろう」と思えるのがほとんどですので、どちらかと言うと読み物的要素が強くなっています。

このシリーズでオススメなのは第1巻の「終盤の定跡 基本編」だけです。後年、シリーズ続編として「新・終盤の定跡」がスタートしました。こちらも第1巻の「ザ必死!」が良書となっており、他は次の一手形式の問題集となっています。