必殺!! 詰めと必死と寄せ300題

超難解な問題は少なく三〜四段レベルの方に最適
この本の詳細をAmazonで見る

評価:B
対象者:有段者
発売日:2008年8月

プロ棋士の公式戦で現れた「詰め将棋」と「必死・寄せ」を厳選して、「居飛車対振り飛車」や「矢倉」などの戦型別に問題としてまとめたものです。
著者は「終盤の魔術師」の異名をとる森けい二九段、監修は羽生四冠ですが、このコンビによる本は多いですよね。

表紙に赤文字で大きく「羽生マジックを終盤の手筋に活かす!」と書かれているので、題材となっている将棋は全て羽生四冠の実戦譜から選んだと思いがちですが、実際は違います。

問題図には対局者の明記がないので、僕もてっきりそうだと思っていたのですが、A級順位戦プレーオフの高橋−大山や王将戦七番勝負の米長−南などの有名な局面が出てきたので、そこに至って初めて羽生四冠を含むプロ全般の将棋を題材にしていると気がつきました。

全343ページの2部構成で、実戦形式の詰め将棋が150問、必死・寄せの問題が150問の計300問が出題されています。圧倒的なボリュームの関係で1ページあたりの出題&解答は2問となっており、解答のページは手順を記すのがやっとな感じです(〜以下詰み、と省略される場面もあります)。

目次
第1部 プロの実戦「詰め」問題(150問)
居飛車対振り飛車戦 / 振り飛車対居飛車戦 / 矢倉戦 / 相掛かり戦 / 角換わり戦

第2部 プロの実戦「必死」と「寄せ」問題(150問)
居飛車対振り飛車戦 / 振り飛車対居飛車戦 / 矢倉戦 / 相掛かり戦 / 角換わり戦

この形は頻出です

「詰め」問題 第27問より:図は△7六同金まで
▲8一馬△同玉▲6一飛△7一歩▲7二銀△同玉▲6三銀△8一玉▲7三桂△同銀▲7一飛成△同玉▲7二金までの13手詰めです。穴熊から引っ張り出してからの一間飛車の筋は頻出ですね。

桂馬で囲いの馬と銀の連携を崩します

「必死」と「寄せ」問題 第56問より:図は△6九龍まで
ここから3手で必死がかかります。正解は▲2五桂△同馬▲3三馬までです。以下△同銀は▲2二銀が後続手となります。

▲2二銀に対して@△同銀は▲同龍△2四玉▲3三龍△1三玉▲2四銀(退路封鎖)△同馬▲2二龍で詰みですし、A△2四玉と早逃げするのも、▲3三銀不成△3五玉▲4六銀でいずれも詰みとなります。

詰め将棋の手数は長いもので21手レベルも登場していますが、平均して11〜13手くらいです。超難解なものは少なく、創作詰め将棋っぽい華麗な手筋が登場する問題もあれば、一直線の追い詰め、駒を複数回取るような俗手的(?)な問題もありバラエティーに富んでいます。一方、必死問題は最短で1手、長いもので15手レベルですが、平均すると5〜7手くらいです。

解答ページは実際の対局で相手が投了した時点を「投了図」として掲載しており、盤面図はその1枚のみです。詰め将棋の場合はこれでもいいと思いますが、必死問題の場合は「この形で必死なんだな」というイメージを掴むためにも必死が掛かった時点の盤面図の方を掲載してほしかったですね。

ただし、合計300問という豊富な問題を戦型別にカテゴライズした構成は素晴らしく、自分がよく指す戦型だけを集中的に勉強することもできるので、無駄なく終盤力の向上が図れるでしょう。

寄せの手筋168」などで掲載されている部分図による基本問題や応用問題を一通りこなした後、ステップアップとして本書に挑戦するのが理想的ではないでしょうか。