将棋・ひと目の端攻め 攻防の手順がわかる200問

端一本で勝敗がつくこともあるので侮れません
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評価:A
対象者:12級〜4級
発売日:2008年1月

以前レビューした「将棋・ひと目の手筋 初級の壁を突破する208問」と同様に、頻出する手筋の問題集です。本書のテーマは全編にわたって「端攻め」オンリーです。
類書には「将棋・端攻め全集−破壊力抜群の必勝手筋」がありますが、そちらは囲い崩しにおける端攻めの解説が少なく、やや消化不良な一冊となっていましたが、本書は問題の量・質ともに申し分ありません。

第1章 端攻めの基本と中盤のテクニック
第2章 終盤の端攻め
第3章 囲い崩し(美濃囲い、穴熊、矢倉、金無双、舟囲い、右玉、米長玉、銀冠)
第4章 駒落ちの端攻め(六枚落ち、四枚落ち端桂戦法・棒銀、飛香落ちほか)
第5章 実戦形次の一手

矢倉への端攻め

図1:棋王時代の南九段が考案した矢倉での端攻めの手筋です。▲1三桂成△同銀にじっと▲2五歩が力を蓄えた好手です。南九段が初めて実戦で披露(相手は谷川九段)した時は、端を薄くしたこのままの状態でプレッシャーをかけておくというものでしたが、狙いとしては、▲1四歩△同銀▲2四歩△同歩▲1四香△同香▲2四飛の十字飛車があります。

この筋は有名で、飯塚六段の著書「分かる・役立つ速効!矢倉の手筋」のP89でもこれと同じ問題と実戦譜(▲佐藤△飯塚の勝ち抜き戦)が紹介されています。

銀冠への端攻め

図2:いきなり▲9三銀と放り込むのが後手玉の急所にヒットする強烈な一手です。△同香は尻金で詰むので△同玉の一手。以下▲9一飛成△9二銀打▲9五歩△同歩▲同香△9四歩▲同香△同銀▲9五歩△同銀▲9四歩△同玉▲9二竜△9三歩▲9九香と、歩と香車で玉を吊り上げて、上と下からの挟み撃ちで寄りとなります。

美濃囲い、矢倉、穴熊とどんな囲いであれ、端を崩す手筋が存在しています。中央の局面で形勢を損ねていても、玉のライン(付近)を直接狙う端攻め一本で逆転勝ちを収めることが可能で、図2のように囲いそのものは無傷でも、彼我の持ち駒次第ではいきなり寄り形になることも珍しくありません。

本書で端攻めの基本パターンを習得することができれば、相性の悪い囲いに対する苦手意識も消え、勝率もアップすることと思います。第4章の駒落ちの端攻めをカットして、その分を他の章に割いてほしかったという気もしますが、A評価にしました。