中村修:不思議流受けのヒント

序・中・終盤の手筋が満載です
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評価:B
対象者:10級〜初段
発売日:2006年8月

本書は「不思議流、受ける青春」と言われた受けの名手・中村修八段が著した「受けの手筋」ガイドです。

各ページの第一行目にテーマ図の正着となる一手がズバリ掲載されていますので、作り手側としては次の一手形式の問題集ではなく、「こういう受け方がある」という読み物的な紹介をしたかったのかなと思います。

全222ページの3章構成で、見開きに盤面図が4枚配置されています。

第1章 序・中盤編
第2章 終盤編
第3章 実戦編

美濃囲いにおける受けの必修手筋です

第2章 終盤編より:図は△5八とまで
居飛車対振り飛車の終盤戦です。後手玉に詰みはなく、先手玉には△3九銀▲同玉△4九と▲同銀△4八金以下の詰めろが掛かっています。ここでは▲3九桂と空間を埋める手が正解となります。以下△4九となら、次に王手が掛からない状態なので、▲3二馬△1二玉▲3三とで先手の勝ちとなります。

▲3九桂とされた局面では、後手陣には適当な受けがありませんので、△4八銀が唯一の勝負手段となるでしょう。しかし、▲同金△3九龍▲同玉△4八と▲同玉以下、先手玉に詰みはありません。

美濃囲いの3九(7一)の空間を埋めて、次に王手が掛からない状態にするテクニックは頻出なので、知らなかった方は是非覚えておきましょう。この筋は有名で、以前レビューした「Zの法則−ゼったい詰まない終盤の奥義」でも登場(P49〜)していますので、お持ちの方はそちらでも復習してみましょう。

掲載されている盤面図は全て双方の玉が配置された実戦形で、受けの一手を放った後に攻撃に転じ、優勢になるまでの手順が解説されています。

見開きの2ページで一つのテーマが完結しますので、読み物感覚で気軽に進められてます。

第1章では飛車先を△8四歩〜8五歩と伸ばされたときに角頭を受ける▲7八金のような、超初歩的な問題もありますが、平均して中級者を対象とした問題が多くなっています。

四間飛車での対棒銀の受け方、相矢倉でのスズメ刺しの受け方、角換わり右玉で棒銀を迎え撃つ手順などの定跡の一部、また中村八段の実戦からの解説などバラエティに富んだ内容となっていますが、反復練習などに適した部分図的な問題は全くありません。

寄せの手筋の習得と同様に、たくさんの問題を繰り返し解くことが上達の近道ですので、この辺は「凌ぎの手筋186」などでカバーしてやる必要があるでしょう。

終盤での貴重な一手を稼ぐ犠打など、必修手筋がわかりやすく解説されていますので、今まで受けの本を読んだことのない方にはオススメです。