実戦!!森内の次の一手(監修:森内俊之)

このタイプの本にしては親切な構成です
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評価:B
対象者:5級〜三段
発売日:2000年8月

その強靭な受けから「鉄板流」の異名をとる(本人はあまり気に入ってないらしいですね)森内九段の実戦から「攻め」と「受け」の好手をピックアップして、次の一手形式で出題する問題集です。

従来の本と違うのは「三段論法」として、@問題図は〜である(状況把握)→Aさらに〜である(状況分析)→Bよって〜が正解となる(結論)というステップを踏んで、解説がなされているという点です。

実際の問題を具体例として下に掲載してみましたので、考えてみてください。

穴熊の急所を攻めます

第17問 第60期棋聖戦 ▲森内−△石川より:図は△7二飛まで
@.問題図で、先手玉は何枚駒を渡しても詰まない形である。
A.自玉は顧みず、詰めろ詰めろの連続で迫ればよい。
B.よって、スピードを重視して▲8四歩が正解となる…といった具合です。

▲8四歩に対してA.△7一飛は▲8三歩成△7三銀に▲8四香以下一手一手の寄りですし、B.△8四同歩も、▲8三歩で必至(△7三銀と受けても▲8二金から詰み)となります。

実戦はC.△7八銀成▲8二角△同飛▲同龍△同玉▲8三歩成△同玉▲8四香以下と進み先手勝ちとなりました。

この本は構成が親切で、解説のページでは「解答図」だけでなく、それ以下の手順を進めた後の結論として「進展図」や変化手順を追った「参考図」など、計3枚の盤面図が掲載されています。

また問題を出題するページでは「問題図」だけではなく、そこに至るまでの途中手順と「経過途中図」も加えられています。

その他、森内九段の攻め・受け・大局観を鑑賞するコーナーでは、観戦記形式で九段の華麗な中・終盤を堪能できるようになっています(全棋譜付きで4局ほど掲載)。

ただし、主婦の生活社から出ている棋書は「寄せの棋本戦術」のレビューでもでも書いたのですが、盤面図に臨場感を出すために駒はすべて「巻菱湖(まきのりょうこ)」書体で印刷されているため、盤面を把握しにくいという難点があります。

既に絶版になって入手が困難だと思いますが、この書体の欠点さえ気にならなければ、「攻め(28問)」「受け(27問)」「大局観(27問)」と問題のバランスもよく、解説もしっかりしているため、なかなかの良書だと思います。