塚田泰明の将棋 遊心

この頃の輝きをもう一度取り戻してくれ
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評価:B
対象者:8級以上
発売日:1992年8月

先手番相掛かりからの「塚田スペシャル」を原動力に22連勝という新記録を樹立(その後、神谷七段が28連勝)し、まさに絶頂期だった頃の塚田将棋を収録した実戦集です。

タイトルの「遊心(ゆうしん)」とは『真剣勝負の中にもどこか遊び心を持っていたい(前書きより)』という意味で、頼まれて書くサインの言葉の一つだそうです。

十八番の△6二飛戦法

第49期A級順位戦より ▲南△塚田:図は▲7九玉まで
「銭の取れる将棋」と賞賛された△6二飛戦法からの華麗な手順です。局面は▲2四歩△同歩▲同角の飛車先交換に△8五桂▲8八銀△6五歩▲同歩△6六歩▲6八金引△6五飛▲7九玉としたところです。

ここで△4四角と出るのが、塚田九段の新研究。放っておくと△2六歩から△2五飛とされますので、▲4二角成△同金右▲2一飛成としますが、以下△3一金▲2八龍△2七歩▲3八龍△2五飛となりました。う〜ん、お見事!

近年は、塚田九段も居飛車穴熊の最強形「ビッグ4」やミレニアムで「姿焼き」にされたり(笑)と、ガチガチに固める将棋に偏っている感がありますが、本書に収録されている将棋(全27局)は実に気持ちよく、横歩取り、相掛かり、対矢倉の棒銀、△6二飛戦法、対四間飛車の急戦など速攻型の将棋ばかりです。

相手が謝っている形からもビシバシ攻めて、まさに真正サド…じゃなかった、「攻めっ気120%」の面目躍如。「塚田スペシャル」と「△6二飛戦法」という塚田九段にとってまさに「ドル箱」だった戦法に決定打が出たのも一因かと思いますが(「消えた戦法の謎−あの流行形はどこに!?」をお持ちの方は、そちらを参照)、それにしても近年の不調っぷりは残念でなりません。

急戦調の将棋が好きな居飛車党の方にはぴったりの実戦集だと思いますが、塚田九段の当時の活躍を知る人が読み終えると、現在とのギャップで少し寂しくなるセンチメンタルな一冊。

この実戦集はシリーズ化(全3巻)されており、次巻はスーパー四間飛車でお馴染みの小林九段の「小林健二の将棋 鍛錬千日・勝負一瞬」となっています。