達人の道 米長邦雄達人戦勝局集

富士通がスポンサーの非公式トーナメント戦です
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評価:-
対象者:米長ファン
発売日:2004年3月

本書はトーナメント棋戦「達人戦」における米長永世棋聖の勝局だけを一冊にまとめたものです。

「達人戦」という棋戦をご存じない方もおられると思いますが、これは富士通がスポンサーとなっている非公式棋戦(勝敗は棋士の記録にカウントされない)で、過去に活躍した40歳以上の棋士10人によるトーナメント戦です。毎年、決勝戦は公開対局となっていますので、楽しみにしておられるファンも多いと思います。

優勝回数は2007年現在、谷川九段、加藤九段、そして米長永世棋聖の3人が4回と並んでいます。数年後には羽生、佐藤、森内の三氏も40歳を超えて参戦資格を得ますので、これから注目度が上がってくることは間違いないです。

非公式戦であるため、棋譜が一般のファンの目につかないという事情があり、そのままではもったいないということで、今回の出版に至ったそうです。

表紙には著者:米長邦雄となっていますが、中身は「週刊朝日」誌に連載されていた当時の観戦記を再掲載するという形になっています。自戦記ではありませんので永世棋聖お得意の「珍談」「猥談(笑)」は一切出てきません。

前220ページで1993年〜2003年までの計20局が収録されています。観戦記者はほとんどが東公平氏で、高橋呉郎・池崎和記の両氏がそれぞれ1局ずつ担当しています。

1993年
内藤国雄九段 / 丸田祐三九段 / 大内延介九段
1994年
佐藤大五郎九段 / 西村一義八段 / 内藤国雄九段
1996年
真部一男八段 / 森けい二九段 / 田丸昇八段
1997年
青野照市九段
1998年
有吉道夫九段 / 中原誠永世十段 / 加藤一二三九段
1999年
有吉道夫九段 / 青野照市九段
2000年
森けいじ二九段
2001年
内藤国雄九段
2002年
谷川浩司九段
2003年
島朗八段 / 桐山清澄九段

1993年 ▲米長△大内戦より:図は△7二金まで
平凡な▲6一竜では△6二金打で逆転されてしまいます。ここで米長永世棋聖が放った▲7三桂打が好手。以下、△同桂▲6一竜△8一桂▲7三桂不成△同金▲7一金△同銀▲同桂成となり数手後に大内九段の投了となりました。

新聞紙上の限られたスペースではなく、「週刊朝日」誌に連載されていたものですので、観戦記は手の解説や対局者のエピソードなどが比較的余裕を持って掲載されています。『この一手を見ただけでも、週刊朝日は安いと思いませんか?』とヨイショまで登場してきますが(笑)

戦型は相矢倉、ひねり飛車、四間飛車対急戦、玉頭位取り、向かい飛車対急戦、陽動振り飛車などバラエティーに富んでいますので、居飛車党の方でも振り飛車党の方でも参考になる内容でしょう。

ただ、どちらかというとこれで将棋を勉強するというよりは、米長ファンの方が読み物として楽しみ、保存版として手元に置いておくという感じの本だと思います。

最後に面白かった一文を掲載しておきます。
『ところで、決勝の相手はどちらなの』と、米長前名人が聞く。
『内藤九段。去年と同じです。』
『いやだなぁ。でも、もう一人のガラの悪い人(大内九段)じゃなくてよかった。』