中原誠:自然流会心の一局 最新自戦譜を徹底解説!!

永世十段とA級棋士の対決
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評価:C
対象者:5級〜四段
発売日:1998年11月

中原永世十段の好局(対戦相手は羽生・佐藤・谷川・米長・高橋など、いずれもトップ棋士)を自戦記として一冊にまとめて出版したものです。永世十段にとっては久々の実戦集となります。

第1章(約50ページ)は自戦記で採りあげている将棋からの「次の一手」形式の問題集(全20題)となっているので、初見の人は「自戦記じゃないのか!?」とかなり驚くと思います。

この章のため、掲載局が自戦記で8局+棋譜形式で10局と、この手の本にしてはかなり少ないものになっています。同じく永世名人の称号を得ている谷川九段の「新・谷川浩司全集」がほぼ同じ値段で、自戦記を15局+棋譜形式で残りの年度対局全て(50局前後)を収録していることを考えると、やや残念な感じが否めません。

全223ページの2章構成で、「次の一手」編は問題図の下にヒントと候補手が三択で記されています。自戦記は見開きに盤面図が4枚配置されており、そのうち2枚が実際の進行図で、残りの2枚が参考図となっています。目次は以下の通りです。

第1章 実戦次の一手編
第2章 実戦解説編
・四間飛車 VS 位取り(羽生善治名人)
・四間飛車 VS 位取り(藤井猛六段)
・相矢倉森下システム(谷川浩司棋聖)
・中原流相掛かり(高橋道雄九段)
・中原流相掛かり(佐藤康光八段)
・対ひねり飛車急戦(先崎学五段)
・横歩取り急戦(米長邦雄前名人)
・横歩取り△3三角(羽生善治竜王・名人)
参考棋譜(盤面図と注釈付きを10局分掲載)

第2章 実戦解説編 対羽生善治名人戦より(▲中原 △羽生):図は▲9七角まで
当初は5筋位取りの予定だった▲中原永世十段。しかし△羽生名人が△5二金ではなく△3二銀だったため、狙いを6筋にスイッチしました。

△5二金と上がっていたならば上図では△6三金が間に合うため何でもありません。▲9七角以降は△6二飛▲6五歩△4五歩と進み早くも決戦になりました。

第2章 実戦解説編 対高橋道雄九段より(▲中原 △高橋):図は△5二同玉まで
▲中原流相掛かりに対して高橋九段が右玉の趣向を見せた将棋の終盤戦。
ここでは▲7三歩成の開き王手を利かせたいところですが、それには△8五桂という絶妙の合駒がありました。

△8五桂以下、@▲同角は△同飛▲同歩△6八金までの詰みですし、A▲7八角は△7七桂成で逆転されてしまいます。そこで上図では、何もせずに単に▲7八角と要の成桂を外すのが正解でした。

最初の2局は中原永世十段の居飛車(位取り)VS 四間飛車という戦いですが、この位取りは上図のように5筋ではなくて、より相手玉に近い6筋の位を取りにくいくもので、中原永世十段の得意形です。

いずれも早めの▲9七角から乱戦模様となるのですが、トッププロの中でも形に囚われない独特の感覚を持つ永世十段だからこそ指せる形で、我々アマチュアにはあまり参考にならないかも・・・。

自戦記も巻末の参考棋譜の18局全てが中原永世十段の勝ち。上記の位取りや中原流相掛かりなど他の棋士は真似しない形が多いので、それを貴重と考えるか、自分は指さないから興味ないなど、読み手によって評価はだいぶ違うと思います。