佐藤康光:注釈 康光戦記

今最も面白い将棋を指すといわれる佐藤棋聖の自戦記
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評価:A
対象者:4級〜六段
発売日:2004年7月

「将棋世界」に連載された佐藤康光棋聖の自戦記の中から、内容的に面白かったものに、さらに書き下ろしを加えてまとめた自戦記集です。

注釈や佐藤棋聖へのインタビューなどを豊富に付け加えることによって、連載されていたものよりも理解しやすいように工夫が施されています。

内容は…
@横歩取りの難しさについて (横歩取り8五飛・対谷川王位)
Aプロの調子について (その他の戦型・対郷田九段)
B読みの合わなさについて (角交換腰掛銀・対森内三冠)
Cタイトル戦の過ごし方 (角交換腰掛銀・対郷田九段)
D新手と感覚について (藤井システム・対藤井九段)
Eなぜ右玉を指さないか (角交換右玉・対森下八段)
F私は熱くなりやすい (向かい飛車・対屋敷九段)
G横歩取りの終盤について (横歩取り8五飛・対谷川王位)
H現代的な指し方について (横歩取り8四飛・対深浦八段)
I完封はいかに生じるか (三間飛車・対羽生王座)
J藤井システムについて (藤井システム・対藤井九段)
K後手番の面白さについて (横歩取り8五飛・対丸山九段)
Lプロ的な強さについて (ゴキゲン中飛車・対久保八段)
M天才少年と戦う (相掛かり棒銀・対渡辺五段)

以上の全14局になっています(カッコ内の戦法は、佐藤棋聖の採った戦法というわけではなく、どういった戦型の対局かを書いてあります)。

局面図や変化図を豊富に掲載して、見やすくまとまっています。佐藤棋聖の対局中の構想や心の動きなどが、対局の進行に合わせて詳細に書かれていて、とても勉強になります。

途中には、どういった構想がいいか?という三択問題も設置されていて、わかりやすく、また飽きがこないようにという配慮もなされています。インタビューもなかなか面白いです。

ただ、プロの自戦記ですからやはりレベルが高いです。掲載されている対局は居飛車同士の対局が多く、盤と駒を使って並べながら読んでみたのですが、振り飛車党の私にはちょっと難しい内容でした。

第1局から指し手の誤植とかもありましたが、まあ、これはご愛嬌ですね(笑)。

本書はどちらかというと、居飛車党の方にオススメの本だと思います。レベル的には有段者向けで、級位者の方にはかなり難しい内容ではないでしょうか。盤と駒を使ってじっくりと並べないと、理解するのは厳しいです。棋譜並べを普段からされる方には、とても勉強になる一冊でしょう。

評価はなかなか難しく、内容的にはA評価だと思うのですが、棋譜並べをされない振り飛車党の方には、B評価といったところでしょうか。

高段者の方には、「佐藤康光の戦いの絶対感覚」も大局観を学ぶうえで非常に参考になると思います。(投稿:Shigekun二段)