小林健二の将棋 鍛錬千日・勝負一瞬

スーパー四間飛車によるイビアナ崩しは参考になります
この本の詳細をAmazonで見る

評価:B
対象者:8級以上
発売日:1992年8月

バリバリの居飛車党から四間飛車党へ華麗なるトラバーユ(?)を成し遂げ、A級まで登りつめた小林健二九段の実戦集です。

タイトルの「鍛錬千日・勝負一瞬」は、池田高校野球部の名物監督だった超色黒・蔦文也氏の「鍛錬千日の行…勝負一瞬の行…」という色紙のサインから、勝手に拝借させてもらったとのことです。

全252ページに28局が収録されています。一番古い将棋は1977年の対青野戦、新しいものは1992年の対米長戦と、ベテラン棋士だけあって年代に幅があります。

居飛車穴熊対策

第50期A級順位戦より ▲有吉△小林:図は▲7九金まで
スーパー四間飛車といえば、やはりこの局面図が真っ先に浮かぶ方が多いでしょう。以下、△4五桂▲5八飛△6五歩▲同歩△同銀▲6六歩に△7六銀と捨てるのがポイントです。▲同金に△6七歩が急所の一撃で、▲同銀は△5七桂馬成が、また▲5九銀には△5七角成(△5七桂成は▲2八飛でたいしたことない)があります。

「端角戦法」と命名されたこの指し方について勉強されたい方は、小林九段の著書「スーパー四間飛車」、「スーパー四間飛車 最新版1 急戦!居飛穴破り」を参考にするとよいでしょう。

掲載されている戦型はもちろん四間飛車が一番多いのですが、当時としては珍しい相振り飛車や坂田式向かい飛車なども登場します。

ガッチリ組んだ左美濃と居飛車穴熊を相手にしての、手厚い中・終盤の指し回しは参考になると思います。どちらかというと金銀を盤上に打ち付ける力強い受けが好きな棋風とお見受けしました。

居飛車持久戦策には、勝ちにこだわるなら「藤井システム」の方が優秀でしょうが、本書のような従来の美濃囲いでの戦いのほうが、密度の濃い中盤と無理攻めを切らす終盤力が求められるので将棋の実力がつくでしょう。

自戦記としては普通の出来ですが、対局時の心理面の描写がなく、またちょっとしたエピソードなどもほとんど掲載されていない点が読み物としてはイマイチです。棋譜以外に「顔」が見えてきません。関西人ならもう少し何とかなるやろ〜(笑)

小林九段は「実戦!スーパー四間飛車」という自戦記も著しており、こちらではプロの棋譜を見ることはあまりない「立石流」などの将棋も収録されていますので、気になる方はチェックしてみてください。

なお、この実戦集シリーズは次巻の「屋敷伸之の将棋 茫洋」で完結となります。これまた懐かしい。