名局コレクション Vol.1 現代矢倉

谷川、森内、佐藤などのトップ棋士による自戦記です
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評価:C
対象者:5級〜五段
発売日:1993年10月

谷川、森内、佐藤、中原、森下、郷田、加藤(一)ほか、矢倉を得意とするトッププロ棋士による書き下ろし自戦記集です。羽生さんが入っていないのが不思議です。

前書きによると、本書が出版された前の年のタイトル戦全42局のうち24局が矢倉戦ということで、まさに「矢倉を制するものが棋界を制す」といった感じです。

この本は買っていないのですが、大学生時代に将棋部の部室にあったものを他の部員が僕の下宿先に持ち込んだまま、十数年の年月を経て本日に至っています(笑)。ま、時効ということで。

全216ページに15局が収録されています(谷川、佐藤、森下、田中、郷田の各氏が2局)。盤面図は見開きに6枚配置されており、上下の盤に挟まれた中段に自戦記が掲載されています。

中原誠vs森内俊之
谷川浩司vs羽生善治・村山聖
加藤一二三vs丸山忠久
高橋道雄vs中原誠名人
南芳一vs加藤一二三
田中寅彦vs塚田泰明・谷川浩司
森下卓vs淡路仁茂・南芳一
森内俊之vs東和男
佐藤康光vs井上慶太・高橋道雄
郷田真隆vs森下卓・中原誠

第41期王将リーグ ▲中原△森内より:図は▲3五歩まで
▲3五歩を△同歩と取るのは、以下▲3四桂△5一角▲5四歩△同銀▲同銀△同金▲7二銀で先手良しとなりますので、△3五同銀としましたが、▲3三歩△同桂▲同桂成△同角▲2五桂△2四角に▲3四銀(!)が歩を補充しつつ相手の陣形を乱す好手となります。銀損でも攻めが続けば先手良しというのが、矢倉の恐ろしいところです。

戦型は森下システムと▲3七銀戦法がほとんどで、森下システム誕生のきっかけとなったH2年の天王戦(▲淡路△森下)も森下九段本人によって解説されています。

田中寅彦八段だけが「△無理矢理矢倉+原始棒銀」と異彩を放っています。今振り返るとこのメンバーで何故、田中八段が2局あるんだと思われる方も多いと思いますが、出版当時の1994年の時点でもそう思っていた気がします(笑)。

中身は至って普通の自戦記ですが、トップ棋士の対局を集めた割には収録数が少ないのが気になります。自戦記形式で矢倉を勉強したい方は「森下の矢倉」の方が解説が充実しておりオススメです。