高橋道雄:振り飛車基本戦法

振り飛車の勝ち方をイメージさせる本
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評価:C
対象者:10級〜5級
発売日:2006年5月

振り飛車の駒組みや居飛車の対抗策を勉強して定跡書で見た局面が現れても、どうしても勝ちきれない初〜中級者を対象とした指南書です。全222ページの5章構成で、見開きに盤面図が4枚配置されています。目次は以下の通りです。

第1章 対原始棒銀
第2章 四間飛車
第3章 三間飛車
第4章 中飛車
第5章 向かい飛車

第3章 三間飛車:図は△7三桂まで
居飛車は次に△8六歩▲同歩△6五歩▲同歩△7七角成▲同銀△6五桂を狙っています。この局面では▲8八飛とするのが定跡です。こうしておけば上記の△6五歩▲同歩△7七角成▲同桂と応じて、後手の8筋突破はなりません。一手先に受けておくのが振り飛車でのポイント。

各戦法もまず2ページ(盤面図6枚)を使って、その戦法を指しこなすコツ・駒組みでのポイントなどを紹介しています。例えば四間飛車では斜め棒銀に▲7八飛とした場面で「歩のぶつかった筋に飛車を寄れ」といった具合です。

定跡形の仕掛け前後で「こんな感じで振り飛車良し」として解説を終了せずに、そこから相手玉を寄せきるまでの手順を掲載しているので「この戦法はこうして勝つんだな」というだいたいのイメージが掴めるのがセールスポイントです。

居飛車の作戦は最も遭遇率の高い居飛車穴熊は登場せず全7局中を6局が船囲いの急戦形です。四間飛車の章では△6五歩急戦・斜め棒銀・左美濃を採りあげています。これは急戦調の将棋を題材にしたほうが、振り飛車特有の手筋や捌きを紹介しやすいということでしょう。

ただ気になったのは第4章の中飛車の部分。近年人気のゴキゲン中飛車じゃないのは別にいいのですが、ツノ銀中飛車から▲3八飛と袖飛車にしてから玉頭を攻める筋だけを紹介しているのはどうでしょうか?

もともと袖飛車は居飛車の玉の筋に飛車を回して、玉頭に嫌味を見せておいて居飛車からの動きを牽制する作戦です。初級者は避けるべき「玉飛接近」の典型ですし、故・大山十五世名人も初〜上級者向きではないと仰っていました。

同棋力の方を対象とした森下九段の「将棋基本戦法 振り飛車編」ではもう少し定跡面のほうに重点が置かれています。重複する部分もありますが、余裕のある方はそちらと合わせて読むといいかもしれません。

得意戦法を見つけたら、実戦と並行してその戦法に特化した一つ上のレベルの定跡書や居飛車の囲い崩し(船囲い・穴熊・左美濃など)をテーマにした「佐藤康光の寄せの急所囲いの急所」などで勉強するのが上達の近道でしょう。