鈴木大介:最強力戦振り飛車マニュアル

主導権を握れる戦法ばかりなので時間の短いネット将棋に有効です
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評価:B
対象者:5級〜2段
発売日:2004年2月

日本将棋連盟の『最強〜』シリーズ第三弾は、近年ハイペースで振り飛車本を手掛けている鈴木九段による力戦振り飛車の本です。

前書きに『(アマチュアの将棋は)いかに得意の形に持ち込み、自分のペースで戦えるかが重要』とあるように、振り飛車ながら序盤から積極的に動いていくアマチュア向きの戦法を中心に解説されてあります。

全222ページで見開きに局面図が4枚の四章構成です。

第一章『角交換型力戦中飛車』 初手▲5六歩から角道を開けたままの中飛車(よーするにゴキゲン中飛車)。▲2二角成とこちらから角交換へ行く変化を中心に解説。

第二章『筋違い角力戦振り飛車』 初手▲7六歩△3四歩▲2二角成△同銀からいきなり▲3四角と打つ、皆さんご存知のあの形である。

この戦法は鈴木大介九段より、著書もある武市三郎六段が有名ですね。本書では@美濃囲いへ進める形A穴熊へ進める形が解説されています。

第三章『穴熊攻略力戦三間飛車』 ノーマルな三間飛車の構えから、▲7五歩〜▲6七銀から石田流+▲7八金と大駒交換後の打ち込みに強い陣形から、▲7四歩と動いていく形を中心に解説。

鈴木九段はこの形に相当思い入れがあるのか、同氏の著書にしては珍しく掲載されている変化が抱負です。

三間飛車で根強い人気を誇る真部流も良いと思いますが、ネット将棋のような短い時間の勝負でシステマティックに勝ちを狙うならこの戦法はオススメだと思います。

第四章『超攻撃型力戦向かい飛車』島八段の名著「島ノート」の中で「鈴木スペシャル」として紹介されている形です。

本書は定跡書ではなく、どちらかというと振り飛車の基本定跡をマスターした人が戦形の幅を広げるために読む本だと思います。

中途半端に玄人好みを狙うのではなく、最初から我々アマチュアが、読んですぐに使える戦法(しかも奇襲の範疇を超えている)だけを採りあげている点に好感が持てる好著です。

鈴木八段の著書で振り飛車全般における戦い方をテーマにしたものには、「NHK将棋講座」テキストを書籍化した「鈴木大介の振り飛車自由自在」がありますので、こちらも参考にしてみてください。

なお、既刊の「最強」シリーズには本書のほかに「佐藤康光:最強居飛車穴熊マニュアル」「久保利明:最強四間飛車マニュアル 急戦編」があります。