福崎文吾:振り飛車穴熊戦法

掲載されている変化手順が少なくかなり不満が残る内容
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評価:C
対象者:5級〜1級
発売日:2002年11月

妖刀流とも評されるその独特の指しまわしで、谷川浩司九段をして「感覚を破壊された」と言わしめた、穴熊のスペシャリスト福崎八段による振り飛車穴熊戦法の入門書です。全222ページ、見開きで局面図が4枚の5部構成となっています。

第1章 穴熊の囲い方
第2章 急戦の戦い方
第3章 持久戦の戦い方
第4章 中盤の攻防
第5章 終盤のテクニック

相穴熊における定番の仕掛け

持久戦の戦い方より:図は▲4五歩まで
以下△同歩▲同銀△7七角成▲同桂△4四歩となります。ここで銀がバックすれば、△8六歩で後手有利ですが、強く▲6一角(7一角もある)が強手です。△4二飛や△4二金上には▲3四銀△同金▲同角成で馬を作って先手良しです。

MYCOMが東大将棋ブックスに代表されるような、深くマニアックな棋書を出版する傾向が強いのに対し、創元社はテーマである戦法の狙い筋などを中級〜初段あたりの人を対象にわかりやすく紹介するというのが方針のようです。

しかし、四間飛車穴熊、中飛車穴熊、三間飛車穴熊(おまけとして向かい飛車穴熊)の対急戦(斜め棒銀、棒銀、4五歩早仕掛け他)、対持久戦(居飛車穴熊、銀冠)を一冊にまとめようとしたこの本の構成には、少し無理があるように思えました。

項数が限られるので、各戦法に割ける変化数が少なくなるのは当然ですが、いくらなんでも検討を打ち切るのが早すぎ(笑)。四間飛車穴熊vs斜め棒銀におけるメジャーな変化で、居飛車が手持ちの角を▲7七角とする局面があるのですが、振り飛車の候補手@△3二金A△4六歩を挙げただけで『いずれにしても振り飛車指せる』と即断、終了・・・って(笑)。

逆に、三間飛車穴熊に対する▲5五歩〜▲4五歩と突き捨てるマイナーな急戦が、比較的詳しく解説されていたりと、もう少し何とかならなかったのでしょうか?

ただ、巻末におまけのような形で解説されている穴熊特有の指し手は、役に立ちます。具体的に言えば、▲7二金(成り銀等)と張り付かれて穴熊に火がついている終盤で、一手を稼ぐために△6一金と打つ手(▲同金は王様からそれて寄せが遅れる)、と金で金銀を剥がされても、手抜きで一手勝ちを決める速度計算、金銀で絡まれた時の△9四歩(上部脱出)等の、穴熊党が知っておかなければならない基本手筋が載っています。この部分だけなら文句なしのオススメなだけに惜しい・・・。

本書で物足りない方は、四間穴熊に限りますが、対居飛車穴熊は「四間飛車道場 第7巻 相穴熊」、対銀冠は「第8巻 銀冠vs穴熊」、対急戦は「第10巻 急戦vs穴熊」で勉強すると、かなりの穴熊魂が注入されますよ。