鈴木大介の将棋 力戦相振り編

手詰まりになりやすい2戦法を解説
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評価:B
対象者:8級〜二段
発売日:2009年10月

鈴木大介の将棋 相振り飛車編」に続くシリーズ第5弾のテーマは「力戦相振り飛車」です。ここでいう力戦とは「相中飛車」と「相三間飛車」のことで、本書ではこの2つの戦型に絞って、鈴木流の新趣向や狙い筋を分かりやすく解説しています。

前222ページの2章構成となっており、盤面図は見開きに4枚配置されています。目次は以下の通りです。

第1章 相中飛車(同型・▲2二角成・△4四銀型・△6四銀型・6二銀型)
第2章 相三間飛車(同型・▲6五角型・△3五歩保留型・△5四歩型)

同型から離れて主導権を握る

第1章 相中飛車より:図は△3四歩まで
中飛車党同士の対戦ならこの形は頻出ですね。ここから双方が腰掛け銀模様にすると5筋で飛車・角・銀の睨み合いが続き手詰まりになります。

本書が推薦しているのは図から▲2二角成△同飛▲4六銀と動いて、▲7七角(▲6六角)の自陣角から▲5五歩を狙いにする指し方です。
また後手が角交換を警戒して、図の△3四歩に代えて△4四銀とした場合に、▲4六歩から高美濃にする変化も登場します。

プロ棋士の間ではこの角打ちは先手不利とされてきましたが…

第2章 相三間飛車 ▲6五角型より:図は▲6五角まで
初手から▲7六歩△3四歩▲7五歩△3五歩▲7八飛△3二飛と進んで、先手から角交換して▲6五角とした場面。本書では以下@△3六歩A△5四角B3四角の手順を掲載。

相中飛車と相三間飛車の将棋は先後同型のため手詰まりになりやすいのですが、本書では鈴木流の新趣向で積極的に動いて局面をリードする手順(上図はその一部)が随所に登場しています。

本書の読みどころは1章の相中飛車です。というのも、ネット将棋を観戦していると、鈴木八段の人気著書「パワー中飛車で攻めつぶす本(後日レビューします)」の影響からか、新規の中飛車党がここに来てさらに増えている感があり、中飛車党同士の対戦も珍しくなくなったからです。

▲5六歩に対して、後手が飛車を振る場所は3筋(僕は断然こっち派)か5筋が一般的ですので、これまでプロの実戦が少ないと言う理由で書籍で紹介されることが少なかった相中飛車の戦い方が学べるのは貴重です。なお、▲中飛車 VS △三間飛車の相振り飛車の戦い方は、「鈴木大介の将棋 中飛車編」で解説されていますので、気になる方はそちらを参考にしてみてください。

相三間飛車は後手が向かい飛車を選択する将棋が多くなっため、以前ほど多く見られませんが、△3五歩保留型や△5四歩型などのように新しい指し方も登場しており、上図の▲6五角の新研究と共にそちらも本書で紹介しています。

ゴキゲン中飛車や石田流を得意とされている方は相振りになった場合、本書のような展開になることが多いので参考になるでしょう。ただし、頻出度で言えば断然、相中飛車>相三間飛車ですが、ページ全体の3分の2以上が相三間飛車の解説となっているのが少し残念かなと。

本書をもってこのシリーズは終了となります。三間飛車編を除いては全部同評価(B)としたのですが、実用度・即効性で比較するなら以下のようになります。
相振り飛車四間飛車>力戦相振り(本書)= 中飛車三間飛車